KUONの洋服のひとつの特徴はカジュアルとエレガントの共存。こちらの記事でもエピソードが披露されていますが、デザイナーの石橋はテーラーでの経験から上品な仕立てを熟知しており、
またkolorでの経験からカジュアルな表現にも精通しています。
このコートのようにドレッシーなイテムの場合は単純に簡略化してカジュアルさを出すのではなく、各部にカジュアルな仕様やリラックス感あるパターンを取り入れて、絶妙なバランスを生み出しています。写真を交えながらご紹介していきます。
まず、説明不要のカジュアルダウンポイントは、裏地と腰ベルトに採用した裂織。
ベルトにはリアルな裂織を採用したのに対し、裏地には滑りの良いポリエステルプリントを採用。
風で煽られたとき、脱いだときにだけ見える「裏勝り」のデザイン。
古くは火消し半纏の派手な裏地から、
近い年代では学生服の裏地のカスタムや裏ボタンのように、脈々と受け継がれる日本独自の伝統的なおしゃれ手法です。(学ランの裏地や裏ボタンについて知らない人はググってくださいね。)
柔らかく、軽く、着やすく仕立てるために毛芯は入っていません。
スーツの上から着用するコートは毛芯入りの構築的な胸周りが格好良いですが、カジュアルなスタイルにはこちらが正解。
肩周りはシルエット構築のための裄綿のみで、肩パットはなし。裄綿にも共地をバイアスカットしたものを使用し、KUON独特の丸みのあるナチュラルなショルダーラインを構築しています。
毛芯を入れず軽く仕立てられたコート・ジャケットは着やすい反面、襟やラペルがへたりやすいというデメリットがあります。
長く着用していくと、ラペルがペタっとしてしまうアレです。
これを解消するため、返り線の部分の伸び止めテープを見返し部分に叩きつけ、毛芯仕立てのようにコシのあるしっかりしたラペルの返りを実現しています。
また、カジュアルさを出すためにゴージは少し低めに設定しています。
袖口部分などの角の始末は額縁仕立てで、しっかりと角が出ています。ポイントとなるディテールはテーラーの手法で仕上げ、上品さも残しています。
裏地の柄を不自然に切らないように見返しに対して斜めに入れた内ポケット、手が入れやすくなり機能性も向上しています。
シルエットはシェイプのきついブリティッシュスタイルではなく、リラックス感を演出するボックスシルエット。ダーツ、裾のフレアも殆どなく、60年台アメリカのサックコートを長くしたようなイメージです。
ファッションは見た目の格好良さがもちろん大事ですが、感覚では伝わりづらい部分、造り手のこだわりを今後も少しずつお伝えできればと思います。
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