FW26 — 見慣れた服に、新しい表情を
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今回は、FW26の中から、特に思い入れのある2つのアイテムをご紹介したいと思います。
奄美大島の金井工芸で泥染を施したMA-1と、SASHIKO GALSの手仕事が詰まった刺し子デニムです。
MA-1もデニムも、僕たちにとって馴染みのある服。
だからこそ、素材や技術の組み合わせによって、まだ見たことのない表情が生まれるところに面白さを感じます。
ただ、技術が珍しいだけではなく、袖を通したとき、穿いたときに、素直に「いいな」と思える服であること。
そのバランスも、KUONがずっと大切にしていることです。
今回は、写真だけでは伝えきれない素材の表情や、服の内側に隠れたこだわりまで、少し詳しくお話しできればと思います。
DOROZOME MA-1
FW26を象徴する一着として、まず紹介したいのが、奄美大島の金井工芸で泥染を施したMA-1です。
泥染は、奄美大島に古くから伝わる伝統的な染色技法。
「泥染」という名前から、泥そのものの色で生地を染めているように思われるかもしれませんが、実際は少し違います。
シャリンバイから抽出されるタンニンと、泥に含まれる鉄分。
それらが反応することで、あの深く複雑な色が生まれます。
つまり泥染は、自然の中で起こる化学反応を利用した染色です。

そして今回、僕たちが選んだ素材はナイロンでした。
泥染といえば、絹やコットン、リネンといった天然素材を思い浮かべる方が多いと思います。
そこに、あえて化学繊維であるナイロンを持ち込む。
一見すると、伝統的な天然染色と現代的な化学繊維は、正反対のものに見えるかもしれません。
でも、泥染そのものも化学反応によって色を生み出すもの。
そしてナイロンもまた、化学から生まれた繊維です。
そう考えると、この二つは実はどこかで相性が良かったのかもしれません。
もちろん、実際にナイロンを天然染色で美しく仕上げることは簡単ではありません。
今回、それを実現してくれたのが奄美大島の金井工芸です。

長年、泥染と向き合いながら、さまざまな素材の性質を理解してきた彼らだからこそ生まれた色だと思います。
仕上がったナイロンには、一般的なMA-1とはまったく違う表情があります。
ナイロン特有のわずかな光沢。
そこに泥染による色の揺らぎが重なることで、光の当たり方によってブラウンにもブラックにも見える、非常に奥行きのある色になりました。
均一ではない。
でも、その不均一さが美しい。
そして着込むことで、さらに少しずつ表情が変化していきます。
天然素材が育っていくような経年変化とはまた違う、ナイロンと泥染だからこその変化も、この服の楽しみのひとつです。
もちろん、このMA-1の魅力は染色だけではありません。
KUONでは、MA-1特有のボリューム感を残しながらも、全体をコンパクトにまとめています。
着丈、身幅、袖のバランス。
ミリタリーウェアとしての力強さは残しつつ、街の中で着たときに美しく見えるシルエットに仕上げました。

そして、この一着でぜひ見てほしいのが裏側です。
裏地には、刺し子織で表現した市松格子の生地を贅沢に使用しています。
しかも、この刺し子織の裏地も金井工芸で泥染しています。
表地はナイロン。
裏地はコットンの刺し子織。
まったく異なる二つの素材を、同じ泥染という技法で仕上げる。
表と裏で素材の表情は違いますが、一着の中では不思議なくらい自然につながっています。
奄美大島の泥染。
金井工芸の染色技術。
ナイロンという現代的な素材。
刺し子織。
そしてKUONのパターンメイキング。

さまざまな時代、素材、技術が、一着の中にギュッと凝縮されています。
伝統的な技術を、そのまま昔の形で残すのではなく、今の素材や服と組み合わせることで、新しいものを生み出す。
このMA-1は、僕たちがKUONでずっとやってきたことを、とても分かりやすく表している一着だと思います。
FW26の中でも、特に思い入れの強い、渾身の一着です。
もうひとつ、FW26でぜひ紹介したいのがSASHIKO MENDED DENIMです。

このデニムが初めて登場したのはSS26。
春夏ではインディゴのみの展開でしたが、FW26では新たにブラックデニムが加わりました。
インディゴは、加工を施すことで生まれる色の濃淡やアタリが印象的で、刺し子とのコントラストもしっかりと出ています。
ヴィンテージデニムのような力強さがありながら、どこか軽くてカジュアル。
今の気分にも自然に馴染む一本だと思います。

一方、今回新しく加わったブラックは、少し違います。
全体としてはとてもシック。
でも近くで見ると、SASHIKO GALSによる刺し子がしっかりと存在している。
ブラックという静かなベースの中に、手仕事のステッチがアクセントとして浮かび上がります。
インディゴほど強く主張しない分、ジャケットやシャツ、ニットなど、いろいろな服に自然に合わせやすい。
刺し子のある服を初めて着る方にも、取り入れていただきやすい一本だと思います。
そして、このデニムの刺し子を担当しているのは、もちろんSASHIKO GALSです。
一針一針、すべて手仕事。
とても丁寧に縫われていますが、決して機械のように完全に均一ではありません。
ステッチの幅や糸の表情、補修の位置。
一つひとつに、縫った人の手が残っています。
だから、同じデザインであっても、まったく同じものはひとつとしてありません。
僕は、そこがSASHIKO GALSの刺し子の面白さだと思っています。
伝統的な技法ではあるけれど、決して堅苦しくない。
丁寧だけれど、どこか自由。
そして、少しポップ。

いわゆる「工芸品」として遠くから眺める刺し子ではなく、もっと身近で、日常の服の中に自然と存在している。
それがSASHIKO GALSらしさだと思います。
もちろん、刺し子だけではパンツとして成立しません。
僕たちがこのデニムで同じくらい大切にしているのが、シルエットです。
ベースにあるのは、Levi's 501に代表されるような、普遍的な5ポケットのストレートデニム。
長い間、多くの人に穿かれてきた完成されたバランスをベースにしながら、KUONらしくシルエットを整えています。
腰まわりからヒップ、腿、そして裾まで。
太すぎず、細すぎず、穿いたときにすっと綺麗に落ちる。
一見するととてもシンプルなストレートシルエットですが、こういうベーシックなパンツほど、パターンのわずかな違いが大きく出ます。
ありがたいことに、KUONのパンツはこれまでも、お客様からシルエットを気に入っていただくことが多くありました。
今回のデニムも、その延長線上にあります。
刺し子の入ったパンツというと、どうしても刺し子そのものに目が行きます。
でも僕たちが作りたかったのは、刺し子を見せるためだけのパンツではありません。
まず、一本のデニムとしてシルエットが美しいこと。
穿きやすくて、何度も手に取りたくなること。
そして、その上にSASHIKO GALSの手仕事がある。
インディゴは、加工によるカジュアルな表情と、刺し子の存在感を楽しむ。
ブラックは、もう少し静かに、日常の中で刺し子を楽しむ。
同じデザインでも、色が変わるだけでまったく違う表情になります。
手仕事による一点ものの魅力と、毎日穿けるデニムとしての普遍性。
その両方が自然に共存していることが、このSASHIKO MENDED DENIMの魅力だと思います。
MA-1もデニムも、写真で見るのと、実際に手に取るのとではやっぱり少し違います。
泥染の色の揺らぎや、刺し子の立体感、そして着たときのシルエット。
店頭に来られる方は、ぜひ実際に試してみてください。
もちろんオンラインでも、できるだけその魅力が伝わるように写真を用意しています。
見ているうちに、ちょっと欲しくなってもらえたら嬉しいです。
