裂き織り

裂き織り ~もうひとつの襤褸の姿~

こんにちは、長谷川です。

”時の経過"

"モノを大事にする精神性"

"生活を豊かにするための知恵"

全てが融合することで誕生した『襤褸』については先週のブログでご紹介させていただきました。

 

では、もうひとつの『ボロ』である『裂き織り』はご存知でしょうか?

裂き織も襤褸・刺し子と同様にKUONを語る上では必要不可欠なエッセンス。こちらも昔の人々の知恵とモノを大事にする精神から生まれた技術です。

そんな裂織ですが、現在KUONの店頭には2種類の裂織があります。

1. 襤褸と同様に木綿布が貴重だった当時の裂織りを使用したアイテム(ヴィンテージ裂織)

2. 日本の伝統技術(精神)を残したい想いから作られる現代の裂き織りを使用したアイテム(裂織)

今回は2種類の裂き織りについて深掘りしていきます!

まずは...

裂き織りとは?

百聞は一見に如かず、まずは写真から。

裂き織り

裂織の歴史

裂き織りの誕生は江戸時代中頃(1700年代)までさかのぼります。
寒冷な東北や北陸地域では綿花の栽培、蚕の飼育は困難で、綿や絹は大変高価で貴重なモノでした。人々はもっぱら麻布をつかった衣服を着用していました。

それ故、当時の人たちは、苦労して手に入れた衣類や布団などを大切にしました。擦り切れて穴が空いたら別の襤褸布や木綿、麻布を手作業で継ぎ接ぎ(刺し子)して再生、寒さを凌いでいました。

と、ここまでは先週書いた襤褸の話とほぼ同じ。

ですが、裂き織りは継ぎ接ぎして使用した襤褸が朽ち果て、刺し子では修復できなくなった生地までも再生します。ボロボロになった生地を紐状に裂き、その紐を麻糸と織り上げて生地として蘇らせます。

裂き織り

写真をよく見ると襤褸布を紐にした緯糸が見えます。藍色の緯糸が襤褸を裂いた部分で、ボロが使用されている裂織は骨董的価値・美術的価値がさらに高いそうです。

ボロボロになった布を裂いて、紐にして、織っていく…とても細かな作業だし時間がかかりそう。ですが、裂き織りには『豊かに暮らす方法』の全てが詰め込まれている気がします。スマホがあれば必要なモノが全て手に入る時代。当時の人たちからすると貧乏を象徴するような裂織ですが、現代においては究極の贅沢品です。

『モノ』とともに受け継がれる精神性

元来は生活のために行っていた裂き織りですが、当時の人たちは配色や柄のデザインを楽しみながら織っていたそうです。『どんなことにも楽しみを見出す』これも見習いたい姿勢です。

加えて当時の人々の『もったいない精神』は徹底しており、時間を掛けて丈夫に織り上げられた裂織は、『小豆を3粒包める布は捨ててはいけない』という言葉とともに母から娘へと代々受け継がれたそうです。そして、裂き織りの生地が破損した際は、組紐にして背負子の肩紐として使用、それでも使えなくなったらまた違う形に…最終的には農作業のときの虫除けとして燃やし、その灰を土に還したそうです。その土で作物を育てる。循環してますね。

ちなみに、フィンランドやアメリカなど世界のほかの地域にも、ボロ布を裂いて織り上げる伝統的な織物があります。やっぱり昔の人々はものを大事にしてきたんですね。("Rag Rug Weave" などと検索すれば見つかリますので、興味がある方はぜひ。)

それでは、KUON店頭に並んでいる裂き織りの話に入っていきます。

KUONの裂織

ヴィンテージ裂織

裂き織り

大正時代から昭和初期頃の100年近く前の岩手県の裂き織り。岩手県の寒さを凌ぐために敷物として使用されていた大きな裂き織りを贅沢に使用して、カーディガンジャケットを制作しました。

大きな1枚の生地として残っている当時の裂き織りは大変貴重で、現在KUON Flagship Storeではビンテージ裂き織りを使用したアイテムはこちらの1点のみ。

1枚の大きな裂き織り生地をデザイナーがしばらく眺めた後に、『右前身頃はここの部分、左前身頃はここの部分、右袖はここの部分…』と出来上がりをイメージして配置を決めていきます。そして出来上がったのがこちら。

裂き織り

裂き織り

裂き織り

一見ランダムに配置していると思われがちですが、実は違和感なく配置するのは難しい。デザイナーが型紙を当てながらシミュレーションを繰り返すことで、カラフルで派手な裂き織り生地が、ごちゃごちゃとならずにまとまった品のある安心する表情に仕上がります。

また、敷物として使用されていた生地なので、しっかりとした厚さと硬さがあります。そんな裂き織りの生地を縫い上げることは非常に困難で、ボロ同様にテーラー誰しもが縫えるわけではありません。さらに、裁断した途端に解れていきます。なので基本的には丸縫いです。

『貴重な裂き織りの生地が卓越したスキルを持ったテーラーによって仕上げられる。』

本当に贅沢だと思いませんか?

裂き織り

内側の裾部分には裂き織りを使用した補強が施されていて、こういうさり気ない遊び心には日本ならではの美意識も感じてもらえるはず。

生地に厚みがあり、初めのうちは本革のジャケットの様に固くて正直着心地はよくありません。しかし、着用を繰り返して年月とともに自分の身体に合わせて馴染んで柔らかくなってくるジャケットは、着れば着るほど好きになるアイテムだと思います。

以前、歴史の先生が裂き織りジャケットを見に来店され、『美術館に飾られるレベルの裂き織りをこんなに近くで見ることが出来て幸せです!このジャケットをおかずにご飯が食べられる!』とまで言ってもらえました。

さすがに店頭でご飯を食べられるのは困りますが(笑)、写真ではなかなか伝わりにくいので、貴重な裂き織りを是非一度ご覧いただきたいです。

それではもうひとつの裂き織りについて書いていきます。

さっこら裂き織り

先ずは幸呼来Japanさんの裂き織りを見てもらいましょう。

裂き織り

↑FW23コレクション

裂き織り

↑FW22コレクション

裂き織り

↑SS21コレクション

デザイナーがシーズンテーマに合わせて頭の中でイメージしたものを幸呼来Japanさんが手作業で織り上げます。KUONと幸呼来Japanさんは17SSからタッグを組んでいるので、出来上がった裂き織りはデザイナーのイメージ通り!

さらに裂き織りをこんな感じで使ったことも。

裂き織り

裂き織り

『裂き織り=カラフルなモノ』

ではなく、洋服の色に合わせて単色で織り上げることで、よりファッションに馴染みます。デザインのアクセントとして一役買うだけではなく、ポケット口を裂き織りにして手を入れやすくしたり、袖部分を裂き織りで補強したり。裂き織りを配する事でデザイン面、機能面が向上します。

そんなKUONに欠かすことの出来ない幸呼来Japanの素敵な裂き織りは、障がいをもつ方々が織ってくれています。『障がい者の雇用の場をつくり、伝統技術を未来につなぎたい』という理念のもと活動されています。

『みんな夢中に裂き織りを織っているし、やりがいを持っている』と、去年お店で開催したワークショップの際に代表の石頭さんが仰っていました。

最後に

KUON共有フォルダに眠っている過去の写真の中から見つけました。

裂き織り

実際に裂き織り機で織っているところは見たことがありませんが、手前の椅子に座って、椅子の上にある杼(ひ)という棒に緯糸をセッティングして織っていきます。

裂き織り

織機の本体にセットした縦糸に杼にセットした緯糸を織っていくと生地が出来上がっていきます。手作業で織り上げていくのはとても大変そうですが、織っているときはみんな夢中に作業しているそうです。中には織ることは好きだけど、織機に生地をセットしたり、生地を裂く工程がちょっと億劫で気が進まない…という方もいらっしゃるそう。

裂き織り

裂き織り

(↑緯糸になる生地を裂く工程)

たしかに…杼に通すための生地を裂いていく作業は、想像するだけで気が遠くなりますね。

日本の伝統技術を残したいという想いで織られている幸呼来Japanさんの裂き織り。モノが溢れかえっている現代において、ほとんど手作業の裂き織りには、織っている人たちの想いや祈りが込められていて、纏えば心が豊かになるはずです。

『もったいないを、もっとゆたかに』

脈々と受け継がれてきた想いとともに幸呼来Japanさんの裂き織りは今も織られています。

そんな想いがこもった生地。ストーリーを知らない人にも『素敵なもの』『かっこいいもの』として広めていくこと、そして、その『想い』を未来に残していくことがファッションブランドKUONの役目ですね。

最後までありがとうございました。

 

ヴィンテージ裂織を使ったアイテムはこちら

VTG SAKIORI V-neck Jacket

さっこら裂織を使用したアイテムはこちら

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