こんにちは、長谷川です。
先週に引き続き2021年秋冬コレクションよりコートをご紹介いたします。
今回ご紹介するアイテムは、コレクションのテーマである【Color】と【Layering】の要素が強く反映されているアイテムです。
テーマの【Layering】ですが、今回ご紹介するアイテムについて、デザイナーの石橋さんがどのようなイメージも持って制作したのか聞いてきたので、そのあたりもご紹介します。
ONIBEGIE QUILT Collarless Coat
ONIBEGIE QUILT Collarless Coat
Color: Dark Indigo , Orange Brown
Price: ¥60,500(tax included)
商品名にもある通り、オニベジという天然成分による合繊染色が施されております。
化学繊維なのに天然染色
オニベジとは天然成分を用いた化学繊維の染色技法ですが、今まではナイロンなどの合繊生地へは天然染料で染色することは出来ませんでした。
その名前からも連想できるように、玉ねぎの皮から抽出された成分を用いて染色することで、ナイロンなどの化学繊維の天然染色が可能となりました。
化学染料だけでは表現できなかった繊細さと天然染料の温かさ、味わいある色合いを表現できました。もちろん天然染料ならではの色味の経年変化も楽しんでいただけます。
Dark Indigoは藍由来の成分を、
Orange Brownはペグノキ由来の成分を使用。
庶民の着物の色に制限(茶色・鼠色・藍色)があった江戸時代。町人たちの娯楽の1つであった『歌舞伎』の人気役者が身に纏ったこのOrange Brownの色合いは、町人たちの間でとても人気があったそうです。
現代と同様にこの時代にも流行りがあったのは面白い。
【Layering】
冒頭での触れましたが、こちらのキルティングコートは『レイヤリング』も表現しています。十二単のように、日本には古来から重ね着の文化がありました。その重ね着を現代的に解釈し、インナーとしてもアウターとしても着用出来るようにデザインされました。
ちなみに、アメリカ軍のM65パーカのライナーもインスピレーション源の1つだそう。いわゆる『モッズコート』のライナー、こういうやつですね。
キルティングの表情やノーカラーな首周りなど、近しいようで近くない。デザイナー石橋さんの感性と技術でオリジナルな1着へアップデートされています。
さて、レイヤリングのイメージですが、まずはアウターとして着用した場合。
スッキリしたシルエットながら、人体の動きを計算して各部に絶妙なゆとりが設けられているので、このようにインナーにボリュームあるフリースジャケットを着用してもストレスなくレイヤリングを楽しめます。軽く柔らかいポリエステルの中綿も重ね着のストレス軽減に役立っています。
続いてインナーとして着用した場合。
Outer: NYLON SATIN Hooded Bomber Jacket
Inner: ONIBEGIE QUILT Collarless Coat
Vest: BUSHED DOUBLE-FACE WOOL JERSEY High Neck Dickie
これが石橋さんがイメージしていたキルティングコートのレイヤリングです。既に完売しましたが、ショート丈のナイロンフーディーの中にキルティングのライナー。光沢感のあるアウターの裾から少しのぞかせるマットな表情の生地。
1着の服として完成されているアイテム達も、レイヤリングすることで『新しさ・可能性・遊び』を感じられます。
各部のディテール
それでは、細かく見ていきましょう。
お気付きですか?
ボタンホールがタテに縫われています。これは、補強のために裏面に配置しているグログランテープの幅が広くなると野暮ったくなってしまうので、そうならないようにする工夫から生まれました。
一見単純なディテールですが、石橋さんから聞いた話によるとミシンの構造上とても難しくて手間がかかるそうです…また少しのズレでも目立つので工場さんが嫌がりがちな仕様だそうです。細部までのこだわりがとても感じられてどんどん惹かれていきます。
さらに水牛ボタンの裏側には力(ちから)ボタンも取り付けられているので頑丈。
こちらは前身頃が重なる『打ち合い』部分。
コーデュロイのパイピングから少し離れた位置にボタンを配置することで、ダブルブレストのような上品なVゾーンを形作り、また防寒性・防風性ともに向上されています。
やや深めのサイドスリットは、構築的なシルエットを強調すると同時に、自転車に乗る、座る、といった動作もストレスなく行える仕様。
また、同系色の細畝コーデュロイのパイピングも、肌当たりの向上と補強はもちろんですが、メリハリが効いたデザインポイントとしても機能します。
制作風景
KUONではモノつくりの際、デザイナーのイメージと実際の商品のイメージを近づけるために、1点1点シーチングと呼ばれる生地を使用して『トワル』と呼ばれるテストサンプルを作成しています。
今回のキルティングコートに関しては、トワル作成の段階から本番と同様にキルティングの生地を使用しています。仕上がりイメージが確認しやすいですが、すごく手間とコストが掛かります…モノつくりに対するアトリエチームの想いやこだわりを感じますね。
こちらの商品も他の商品同様、書ききれないぐらい細部までこだわりが詰め込まれています。KUONの服には『デザイン』と『機能』を追求したディテールが盛り沢山です。全てのディテールに意味があるので、それらをしっかり見ていただけたら嬉しいです。
商品ページはこちらから。
最後までありがとうございました。