こんにちは、長谷川です。
KUONのボロが3種類あることはご存知でしょうか?
『襤褸』『アップサイクルボロ』そして『アップサイクルボロタイプ2』の3種類。
KUONに入ったばかりの当初は、どれがどれだか中々理解出来ずに頭の中がごちゃごちゃでした。KUONに入ってもうすぐで3年。やっと頭の整理が付いたので、今回は3種類のボロについて書いていきます。
襤褸とは?
現在ではヨーロッパを中心に世界でも美しいと、アート的な評価を得ている日本文化となった襤褸。
『そもそも襤褸ってなんだろう?』から書いていきます。
襤褸の誕生は江戸時代以前。冬は長く、雪が多く降る、寒さが身に染みる東北・北陸地方における防寒具として誕生。
当時、衣類や木綿は東北の山間や沿岸部では大変貴重なモノでした。そのため、仕事用の野良着、肌着、パジャマまで、生きていくうえで必要最低限な衣料でさえ擦り切れて破けるまで着続けました。
↑代表藤原のコレクションの1つ。元々は野良着として使われていた襤褸に、明治時代頃に襟とボタンを取り付けたと推測されるシャツ
破けて穴が空くまで大事に着用した衣類を当時の人たちは捨てるのではなく、穴が空いた箇所に別の麻布や木綿、襤褸布を手作業で継ぎ接ぎ(刺し子)してさらに着用しました。そして、破けたらまた継ぎ接ぎしてという繰り返し。繰り返し補修した結果、生地は何層にもなりました。分厚くなった生地は防寒用途としても活躍したそうです。
丈夫な木綿糸を使用して、刺し子された布は味わい深い表情に。古い布が一番下で新しい布が一番上に来る生地の層は、長い時間の経過を感じられ、また人々のモノを大切にする温かい気持ちも感じられる感じることの出来る唯一無二の存在感をもちます。
ある種、日本の文化を凝縮したかのような生地は、"BORO"として世界で評価されるようになりました。
"時の経過"
"モノを大事にする精神"
"生活を豊かにするための知恵"
全てが融合することで、襤褸は出来上がったんですね。
ちなみに、今でこそ希少性が高くて高価な襤褸も、当時人たちからすると貧しさの象徴で、洗濯後に外に干すときは一番見えづらい場所に干していたそうです。
当時の人たちが今の襤褸の値段を知ったらびっくりするんだろうなぁ…
襤褸布を層にしていく刺し子の技法にも、当時の人たちの知恵が詰まっています。長くなるので刺し子については別の機会にご紹介いたします。
脱線ついでにもうひとつ。KUONが襤褸と同じく創業初期から使用している『裂き織り』も実は同じような背景、精神性から生まれたものです。
それでは、KUONの3種類のボロについて見ていきましょう。
KUONの襤褸
KUONシグネチャーの襤褸ジャケット。
説明不要ですね。"The BORO"です。手紡ぎの糸を手織りしているからこそ溶けるようにボロボロになった生地、幾重にも重なった継ぎ接ぎは悠久の時間を感じることが出来るし、不格好な手刺子には愛くるしさも。
1着のジャケットでも見る場所によって異なる表情なのも面白いですよね。
そして、デザイナーの培ってきたスキル、そしてそのスキルを活かしきる熟練テーラーの技術が加わることで、『襤褸の生地を使ったジャケット』ではなく、『KUONの襤褸ジャケット』になります。
生地に厚みはありますが、最高の技術で仕立てることで着心地抜群です。
美術館に展示されたり、ディスプレイとして購入されることもある襤褸ジャケットですが、本当のところは実際に着用していただきたい。もし破れたり解れたりすれば刺し子で補修して、さらなる時間を重ねていきましょう。こういうことが本質的なラグジュアリーではないでしょうか。
その他KUONの襤褸はこちら。
それでは、2つ目のアップサイクルボロに行きます。
アップサイクルボロ
まず写真から。こちらがアップサイクルボロを使用して制作したジャケットです。
先ほどご紹介した、KUONの襤褸ジャケットを制作する過程で出る端切れの生地を捨てずに残しておいて、現代を生きる刺し子職人、大槌刺し子のお母さんたちに刺し子でパッチワークの生地を作ってもらいます。
当時の人たちと現代を生きる人たちの、モノを大事にする"もったいない精神"が融合した生地。
そんな、捨てるはずだった襤褸布に手間ひま加えてアップサイクルした生地を私たちはアップサイクルボロと呼んでいます。
よく見ると生地の層があったり、焦げている部分があったりで、見れば見るほど惹きつけられます。
ちなみに、
VINTAGE BORO Device Strapも襤褸の端切れを使用して手で編んで制作しているのでアップサイクルボロです。
ひとつひとつ色合いが異なるので、店頭にお越しの際はこちらもチェックしてみてください。
アップサイクルボロを使用した商品はこちら。
それでは、3つ目の"アップサイクルボロタイプ2"にいきます。
アップサイクルボロタイプ2
こちらも写真から。
アップサイクルボロタイプ2は、襤褸からアップサイクルボロを生み出した経験をもとに、衣類を生産する工程で出る、『捨てられる端切れ』を工場にてパッチワークした生地です。昔の人々が生み出した生地を現代版にアップデート。
もちろん、ただパッチワークするのではなく、移染しないように処理したり、襤褸の風合いに近づけるためにウォッシュ加工が施されております。
人々のモノを大事にする精神性を受け継いでカッコ良い洋服にするなんてロマンがありますよね。
是非、店頭で触って見比べてみてください。
最後までありがとうございました。
本日ご紹介した生地を使用した商品はこちらから。
・襤褸